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2007/11/17開設
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平日の昼間だというのに、うちの近くの洗車場は異常に混んでいた。

晴れているのに、ときどき小さな雪が空から落ちてきた。

「じゃんけんで負けたほうが車を洗おうよ。」とケイコに提案した。

助手席に座って前を見ていたケイコは、こっちを向いて

「じゃあ、勝った方は何するの?」と聞いてきた。

「別に。負けたほうが車を洗ってるところを中から観察してればいいよ。」

ちょっと考えた後、ケイコは、「えー、外すごい寒そう。」といった。

「これ、ケイコの車なんだし、本来俺が洗う必要はないんだよ。それを

もしケイコがじゃんけんで勝ったら俺が洗ってあげるっていってるのに・・・

とっても紳士的な提案だと思うんだけど。」

「本当の紳士なら、黙って洗ってくれるわよ。」

「いいから、いいから、とにかくじゃんけんしよ」

結局ケイコはじゃんけんすることに同意し、そして負けた。

「寒っ」という声のすぐ後に「バタン」という助手席を閉める音が続いた。

俺は、スポンジにカーシャンプーをつけて、一所懸命フロントガラスを洗う

ケイコを車の中から眺めていた。力を入れてごしごし洗っているせいか、

ケイコの口が少し開いていた。


俺が子供のころ、よくポカーンと口をあけてテレビを見ていた。親戚のおばさんに

「ポカーンと口開けてると、アホ虫が入ってくるよ。」と何度も注意された。

結局、大人になるまで口を開けてテレビを見るクセは治らなかった。

今まで何億匹のアホ虫が俺の中に入り、出て行ったのだろう。


「俺の頭の中は、アホ虫にいいだけぐちゃぐちゃにされて、

これ以上悪くなることはない。だけど、ケイコは違う。

早く彼女の口を塞がなきゃ。」そう考えると、いてもたってもいられなくなった。


「後ろから左手でケイコの口を塞ごうか、それとも前から俺の唇でケイコの

口を塞ごうか」ニヤニヤしながら運転席のドアを開けた。
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